市章 認知まで

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市章 認知まで

2013年 4月1日 花時のこの季節、暖かな日差しに澄んだ空。 入学や入園、入社など、この時期は昨日までの自分とは違う新しい一歩を踏み出す、前進の日だ。 そんな前向きな日に、動画サイト″yotabe″に、 後ろ向きな内容の動画が投稿された。 動画のタイトルは「ホワイトキャットの内部告発」 動画の内容は淡白であり、薄暗い部屋の中、 中心にあるたった1つの灯りの前に人が1人、カメラの前に立っていた。 その人は、全身白のジャージ姿で、顔を白い猫のお面で隠している。 ジャージはサイズに合ってなく、動画に映るその人は、男なのか女なのかは分からない。 そんな性別不詳の人物がカメラの前にただ1人直立していた。 不気味な部屋に、ただ1人。 オカルトじみたホラー、最初の印象は怖さがあった。 動画が始まって数秒後、その人の性別はすぐに確認ができた。 「今の日本は酷い、権力が全てだ。」 古びた金具のような渋い声。 タバコを吸い続けているであろう、掠れた声。 その声のおかげで動画の人物が男であると認識した。 彼のたった一言は、動画の第一印象であった不気味感とは、また別の怖さがあった。 「若者よ。今は好きか? 夢はあるか?人は好きか?」 男はただ淡々と話を続ける。 「夢、、、人は必ず夢を見る。 いつの日も、夢を見続ける。 子供の頃に見ていた夢は、大人になった今、叶えているか? 恐らく、叶えられていないだろう。 叶えられているとしても、それは自分の夢では無い。 夢へ導いてくれる親の夢だろう。 人は他人任せだ。 自分が叶えられなかった夢を人に押し付け、 子供の頃に描いていた夢はいつしか、 利を求めた大人の夢へと変わっていった。 そうしているのは、紛れもない。国家なのだ。」 男はゆっくりと両手を後ろに組みカメラの前に立つ。 「今の日本は、金で全てが決まる。 金の無い奴は自由を手にできない。 金をつくるために人は働く。 努力が実らない社会で才能のある奴が上に立ち、金を持つ」 「こんな汚染された国は嫌だろ?」 男は後ろに組んだ手を戻し、両手を広げる。 「我々は、代猫(シロネコ) この汚物にまみれた日本を清く真っ当な国に変え、 未来を作り上げる伝説になるものだ。 貧民の依代に立ち、猫のように自由を招く。 これからは、我々の活躍に期待して欲しい。」 動画再生時間わすが3分。 再生回数は21回。 この動画が全ての始まりだった。
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