市章 認知まで

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「ハロー、暇人」 4月7日 私立 信第中学校 3年3組 13時36分 木面の教室に生徒がそれぞれ休み時間を過ごしていた。 左端の席に座る俺の目の前にはクラスメイトの女子 ″草輪 日向(クサワ ヒナタ)″が声をかけてきた。 「千早、ラストjcはあんたでお納めだよ。 思い出作ろうぜ」 彼女は中学から知り合い、 1年の頃同じクラスになって、 共通の趣味があることから、仲良くなった。 2年でクラスは別になったが、仲の良さは変わらず、 女子の中では割と信用できる友達だ。 「うい。俺は今、非常に眠いの。 だから、暇人じゃねーよ。」 あからさまに眠気を表現するように、 自分の眼を擦る。 「まぁ、ひなと同じクラスになれたのは、ほんとラッキーだよな。 お前もラストjcは俺で納めるのは嬉しいだろ。」 性格は明るく、純粋で天然であり、愛想もいい。 スラっとした体型に、小さな顔。 髪型はショートボブといったスポーツ女子のいい例のような女の子。 ひなは俺の肩にぽんぽんと叩き、俺の言葉に応える。 「まじラッキーだな。 今年は修学旅行あるし。最後の文化祭、運動会。 青春を謳歌するぜ。」 言動も男っぽい。 荒っぽい性格に見えるが、芯は通っており、 裏表もなく、思いやりも強い。 そんな性格が、俺が女子の中では信用できる1番の理由だ。 「今年は、最後の文化祭に運動会、修学旅行もあって、青春の醍醐味が詰まってる一年だな。」 そんな一言に肩をすくめ、ひなは はぁと、ため息をつく。 「受験も始まるよ、、、 公立の高校を受かるには、まずは勉強を、、」 それを聞いた俺はひなと同様にため息をこぼす。 お互い勉強は得意じゃない。 すごく頭が悪いってわけじゃないが、急に現実を突きつけられた俺は、憂鬱になった。 ーーキーンコーンカーンコーンーー 話を遮るようにチャイムがなった。 5時間目が始まる。 「まぁ、受験なんて来年の話だろ? 考えるのは、まだ早いぜ。」 慰めるようにひなの肩に手を置き、 今年もよろしくと笑顔で返す。 おうと返事をし、ひなは自分の席に戻っていった。 自分の将来が微塵も分からない齢13歳にして、急に突きつけられる大人になる第一歩。 受験に遊び、この中学3年の思い出は、将来絶対にすごく濃い物になりそうだ。 ーーこの浅はかなワクワク感や微量な大人になる覚悟とは、桁が違う大きな絶望と復讐心が俺を、俺たちを襲った。ーー
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