序章 異世界への切符

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俺は、地獄谷竜夜。 21歳のサラリーマンだ。 能力 与えられた仕事を時間までに必ず終わらせる と言う、一般的な存在だ。 今、俺は残業を終え、駅へ向かって居たのだが… 今日は可笑しい。俺の唯一の取り柄である『仕事を時間までに片付けられる』事が出来なかった。 今日は何か起こる気がする… そう、意味の分かない妄想をしつつ、俺は駅のホームに向かった。 「やぁ、竜夜君。」 「あぁ、駅のおっさんか」 「今日は随分遅いじゃあないかぁ」 このおっさんは駅に住む男だ。毎日駅員を脅して無理矢理居座っているようだが。 俗に言うホームレスである。名前は知らん、聞く気も無い。 そして、俺の人生の脇役の中の脇役でありながら、一々登場しようとする謎の人物だ。 はっきり言ってしつこい。 酒でも飲んでいたのだろうか。 酒臭いのだが…… 「仕事、失敗したのかぁぃ?」 「…はい。」 このおっさんはあまり得意では無いが、ただジッと電車が来るのを待つよりは暇潰しになりそうだ。 それから10分間程、おっさんと話をした。 「……だから、よ。」 「竜夜君よ、おめぇはもっとビックになるべきだ。そんなさぁ、ブラック企業に居るべきじゃあ無ぇんだよ。」 人の人生に口出しするな。 俺の人生は俺が決める。 そう言おうとした時、アナウンスが鳴り響いた。 「…もう時間だ、あばよ、おっさん。」 「あぁ、」 俺は駅にぽつりと残ったおっさんの姿を見ると、電車に乗り込もうとした。
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