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やっと外に出られた。知らない人、しかも男の人と1時間場所を共有していたなんて私にしたらとんでもないこと。
例えるなら犬が苦手な人に沢山の犬がいるドッグランで遊びなさいと言ってるのと同じくらい。
エレベーターのボタンを押すけどなかなか来ない。その時間にモヤモヤして階段で降りることにした。
トントントン、規則正しい靴の音。
あれ・・・?でも明らかに私とは違う靴の音が聞こえる。ひょっとして、さっきのうち誰かが追いかけに来た・・・とか!?
「そこのアンタ。そう長い黒髪の人」
変な緊張しながら顔をあげてみると、やっぱりそうだ。さっき同じ部屋にいた男の子。
恐々顔を見ていると。
「平気。俺は連れ戻しになんて来てない」
「じゃあ、なにを、しに?」
「俺もああいう場とか嫌いなんだ。変にテンション高い空気とか頭痛いよ。あんたも、えっと名前なんだっけ?」
この人も私と同じものが苦手、普段人を見た眼で判断しないけどこの人は綺麗で優しい目をしている。
きっと苦手なのも、私の名前を知らないのも本音。
それに気が付いたら肩の力がふっと抜けた。
「森山美都、あなたも教えてくれる?」
「稲村薫。薫でいいから俺も美都でいい?」
「…出来れば名字で呼びたいし呼ばれたい」
「ん。りょーかい」
そうして2人で階段を下りてカラオケ店を出た。この後どうしようかな。お母さんに伝えた帰宅時間よりまだ余裕がある。
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