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桃色鱗。
顔、というより左目に違和感を覚えたのはいつだったか。
元々甘いものが好きだった。
でも、今の状況が異常だということはわかる。
普通の食事が喉を通らない。
甘いものばかり食べてしまう。
体重も体型も変わらない。ただ、日々変わるのは左目にそってできている痣。
まるで《鱗》のような痣。
甘いものでできているような甘い色の鱗みたいな痣。
窓の外から、ぱしゃりと水が跳ねた音がした。
「ねぇ、その痣治したくはない?」
窓枠から外を見るが姿はみえない。
「下よ、下。海!」
声に従い海を見る。
窓枠の下には海面がある。
「……マーメイド」
ぱしゃりと尾びれが水面を叩く。
「そうね。人間はそういうわ」
美しいミモザ色の瞳と青空のような髪色に目を奪われた。
「貴方のその病は人魚の涙で治るわ」
涙の条件は、陽の感情で流した涙。
悲しみや辛さで流れた涙は薬にはならない。
「……へぇ、そうなんだ……
ねぇ、マーメイドさん。一緒にケーキ食べない?作りすぎたんだ」
鱗の痣は気にしない。
ただ、目の前に現れた人魚姫を笑顔にしたいと思った。
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