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「そういえば、怖く感じたことも初めてだったけど、妙に惹かれて目が離せなかったんだよなあ。なんだったんだろう」
琢磨に質問したと言うよりは、独り言のように呟いた。それを聞いて琢磨がハッとして右手で口を覆う。困ったり驚いたり、感情が顔に出そうになると顔を隠そうとする琢磨の癖が出た。
「……実は、俺もなんだ」
「え?」
「俺も転校生ーー加納に惹かれた。他の奴らほどじゃないけど、熱狂しても不思議じゃないなって感じるくらいに」
琢磨の言葉に、俺は驚いた。惹かれたのは俺だけじゃなかったのだ。だとすると俺の能力は関係なくなる。俺は今まで誰かに熱狂したことはない。テレビで芸能人を見て格好いいとか可愛いとか興味をもつことはあるが、熱狂するほどに惹かれたことはなかった。
そしてこう考える。転校生は非常に魅力的だが、俺には能力のせいでが自分を惹き付けてくる真っ黒な塊に見えてしまい、先に恐怖感を覚えてしまった。逆に俺以外は普通に人に見えるから、純粋に魅力的な転校生に惹かれたのだ。そこまで考えて……ふと気になった。
「そういえば、他の奴は……えっと、加納だったっけ? そいつに夢中なのに、なんで琢磨はその程度で済んでるんだ?」
誰が誰にとって魅力的かなんて個人差があるのはわかっている。ただ今回は加納に惹かれる人が多すぎたから疑問に思ってしまった。
「……なんでだろうな?」
二人揃って腕を組んで首をかしげる。悩んでいるうちに昼休みが終わる時間に迫っていた。ビニール袋をゴミ箱に捨てて琢磨と二人で教室に戻った。
結局、圭介と俊樹は来なかったな。
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