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放課後になった。やはり、みんながおかしくなっている。授業中は教師までもがちらちらと加納に視線を向けていて、教室全体がそわそわした空気になっていた。それに授業が終わる度にクラスメイトが集まってくる。その様がまるで別の生き物のように感じてしまうが、体を机に突っ伏せて見ないようにしていた。
みんなが見てるのは加納だ。俺のことは見ていない。無視されるのであれば、俺も無視すればいい。
体調が万全じゃないのもあるだろう。今はもう、なにも考えたくなかった。
「あの、ちょっといいかな」
ホームルームが終わればまたクラスメイトが集まるだろう。そんなことに巻き込まれたくはない。すぐに教室から出られるよう準備をしていると、誰かに訪ねるような声が聞こえていた。どうせクラスの誰かが加納に声をかけたのだろう。ろくに聞かずに担任の話が終わったことを確認して席を立つ。
「あ、あの!」
慌てて呼び掛ける声と何かが倒れたような音が聞こえて、足が止まる。そんなことあるわけないという考えと、もしかしてという考えがせめぎあい、恐る恐る振り返った。
「あの……図書室って、どこですか?」
俺が帰ろうとしたから立ったのだろうか、加納であろう黒い塊がそこにいる。後ろにある椅子は倒れており、勢いよく立ったから倒れたんだろうとは推測できる。
では、何故そんなに慌てているんだろうか。既にぞくぞくとクラスメイトが集まってきている。彼らなら笑顔で答えてくれるだろうに。
何故、黒いままの感情に、まるで期待を込めているかのように黄色が混じっているのだろうか。
「図書館ならこの教室から反対側の二階だよ。案内してあげようか!」
誰かの声が聞こえる。それが誰だったかなんてどうでもいい。集まるみんなが加納に笑顔を向ける。そんなクラスメイト達の姿が、異形の何かを見ているようでたまらなく気持ち悪かった。
「解決したね。じゃあ」
それだけ伝えて加納に背を向ける。距離を開けるとそこに誰かが入り加納へと近づく。
それでおしまい。今日はいろんなことが起こり、色々考えすぎた。もう休みたい。
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