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どうした? 何を怖がっている。叫びたいなら叫べばいい。相手が勝手に察してくれると思うな。何かしないと、何も伝わらないぞ。
ああそうだ。怖いさ。怖いに決まっているじゃないか! とんでもない姿で現れて、俺も、皆も連れ去って、誰も彼も変えてしまった!
なんだ、何を伝えたいんだ。そこに立っているだけじゃわからない。俺を見るだけじゃ何がなんだかわからないままなんだ! なにか言えよ!
叫んだ、つもりだった。全身全霊を込めて出来たことは口を動かすことだけで、呻き声すらあげられなかった。
叫びたかった。なぜ? どうして? どうやって? 知りたい欲求が大きくなっても、それをどうしても恐怖が覆い隠す。それなのに、その思いが通じたかのように、それが息を吸う動作をしたように見えた。
そしてーー。
強い緊迫感に包まれたまま、目が覚めた。身体中が緊張していて、しばらくは呼吸をすることで精一杯だった。徐々に緊張が解け、うつ伏せの状態からゆっくりと体を起こす。制服を来たまま寝てしまったことを思いだし、シワが入ってくしゃくしゃになってしまったそれを見下ろしてため息を吐く。時計を見ると夕食の時間より少し前だった。
商店街で洋子さんと別れた後は、何事もなく帰宅することが出来た。顔色が悪い事に気づいた母さんに心配されたのは心苦しいが、大丈夫だと、少し寝れば治ると言ってすぐに自分の部屋に入り、着替えもせずにベッドに横になったのだ。
これまでのことを思いだして天を仰ぐ。洋子さんに励まされても、やはり今日の出来事はあまりにも悪い意味で刺激が強すぎたようだ。寝入るのは早かったはずだが、夢見が悪かったようだ。
体はだるいが、学校でも寝て今も寝ていたことで寝過ぎてしまったからだろう。そう決めつけてベッドから抜け出し、部屋着へと着替え、シワだらけの制服を持って部屋を出た。
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