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カードではなく、琢磨の顔をじっと見る。その様子は琢磨の表情からどちらがジョーカーなのかを読み取ろうとしているように見えるだろう。だが、違うのだ。
琢磨の周囲に広がる、色の付いたおぼろ気な光。向かって右のカードをつまむと光に黄色が混じり、明るい色になった。指を離し、今度は左をつまむ。黄色く明るかった光が、黒が混じって暗くなる。それを見て確信し、そのまま左のカードを引いた。
「だああ! また負けた!」
「こういう状況になった時の直哉は強いよなぁ」
引いたカードはスペードのエース。見事勝利をもぎ取った。にやにやと笑いながら、トランプを整理する琢磨に声をかける。
「危なかったー。野球部のエースでもトランプのエースには見放されたかな?」
「上手いこと言ったつもりか? もう一回だ!」
「もう昼休み終わるから駄目ですー。勝ち逃げ!」
一人ため息を吐く琢磨を除いた三人で笑いあう。土門琢磨、相澤圭介、斎藤俊樹の三人とは小学生の頃からの親友で、かれこれ五年の付き合いだ。
「なあトシー。俺ってそんなに顔に出る?」
「いや、全然わからん。直哉がおかしいだけ」
琢磨に声をかけられた俊樹の返事に、俺は苦笑いをしながら答えた。
「たまたまだよ。たまたま」
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