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担任の教師が話す他愛ない内容のホームルームが終わって放課後。部活動に勤しむ琢磨と圭介は、挨拶もそこそこにそそくさと教室から出ていった。二人とも来月の秋期大会に向けて力を入れているようだ。席に座ったまま手を振って二人を見送ると、今度は俊樹が話しかけてきた。
「直哉は今日将棋部来る?」
「行かない。アルバイトあるし」
「家のお手伝いかー。偉いねえ」
「アルバイトだ!」
けらけらと笑いながら俊樹が教室から出ていく。その後ろ姿は黄色に少しばかりピンク色が混じっていた。
なに考えてるんだアイツは。
補足をすると、将棋部とは言うがほぼ幽霊部員の同好会である。俺を含む名前だけ貸している幽霊部員三人、半分半分の俊樹、本気で取り組んでいる女子生徒一人の計五人だ。俊樹の半分が何かはご想像にお任せする。
俊樹が見えなくなって、さてと俺も席を立つ。まだ教室に残っているクラスメイトに挨拶しながら教室を出て、廊下で鞄からスマートフォンを取り出すと、コミュニケーションアプリに母さんから連絡が入っていた。何てことはない、雑貨を買ってくるようおつかいを頼まれていた。短く了解とだけ返事をして、通学路の途中にある商店街を思い浮かべながら学校を出た。
校門を出てから十五分程度歩いたところに、並木道商店街という商店街がある。多種多様な個人経営の店舗が連なり、近くの住宅地から来る人が多い。大型スーパーマーケットもあるがここからは車で三十分かかる距離にあるため共存出来ているのだ。
既に馴染みになってしまった雑貨屋の店主と軽い談笑をしてからおつかいの買い物を終わらせる。両手に買い物袋を持って外に出ると、ちらほらと買い食いをしている生徒が見かけられた。クレープがおいしかったのだろう、赤と黄色が混じった強い光が目に入った。羨ましいと横目を向けながら素通りする。目的地はそのさらに先にあるからだ。
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