ナオ

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 妻がトレイにマグカップを乗せ、部屋に入ってきた。 「コーヒー持ってきたよ」 「ありがとう」  マグカップを受け取ると、妻は口の開いたダンボールを見て「そんなの引っ張り出してどうしたの?」と聞いた。 「ちょっとね」 「次回作のネタ探し?」 「まぁ、そんなところかな」 「それで、いいネタは見つかった?」 「ネタはなかったかな。だけど面白いもの見つけたよ」  言いながら僕はメガネ少女の写真を妻に見せた。 「なっ!なんてモノ持ってるの!!」 「懐かしいでしょ? 美少女戦士」  そう言って、僕はわざとらしくニヤリと笑って見せた。 「ばっ、ばか!!」  妻は僕から写真を奪おうとするが、僕は軽く身をかわして書斎の中を逃げ回る。 「渡しなさい! それは封印されるべき黒歴史よ!!」 「危ない、危ない!コーヒーこぼしちゃうよ」 「返せー!!」 「いやだよ。せっかく発掘した宝物なんだら」 「そんなものこの世から抹消してやる!」 「ああ、ダメだって!コーヒーが、危ない!落ち着いて、ナオ!!」  妻とじゃれ合いながら僕は図書室での出来事を思い出していた。  あの時もこんな風に本を取り合った。とても懐かしくて、いまも忘れられない思い出……。    いまではもうナオと出会わない人生なんて考えられない。  僕はきっとこの先も彼女と楽しい時を積み重ねて行くのだろう。  これからもよろしく。ナオ!
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