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ナオ
ゴソゴソと押入れの荷物を漁っていた。
「どこに片付けたっけなぁ」
独り言をつぶやきながら、僕は押入れの一番奥にあった古いダンボール箱を引っ張り出す。
その段ボールに入っているのは、捨てるに捨てられなかった物。昔は宝物だったこともあったガラクタたちだ。
ダンボールの蓋を閉じてから、もう十年以上開けていない。
なぜいまさらこんなものを引っ張り出したかというと、原因は昨夜の電話にあった。
電話は高校の同級生からのものだった。高校を卒業して以来、いちども連絡もなかったのに突然電話してきたのだ。どうやら実家の母に僕の電話番号を聞いたらしい。
まったく、勝手に教えるなよ。などと思っても、いまさらだ。
電話の内容は、同窓会を開くので参加してもらいたい。とのことだった。
高校時代にあまりいい思い出のない僕は、曖昧な対応で参加の有無を保留した。
保留はしてみだが、僕が同窓会に行くことは、まずないだろう。
地元での生活を嫌っていた僕は、高校を卒業してすぐに田舎を出た。
だから卒業式以来、同級生と顔を合わせたことはないし、電話のあった同級生の顔も思い出せない有様だった。
そんなだから、地元に帰りたいとも思わないし、同級生たちに会いたいとも思わない。
でも、電話の主の顔ぐらいは思い出そうと、卒業アルバムを引っ張りだすために十年余り封印されていたダンボールの蓋を開けることにしたのだ。
あの古ぼけた学び舎を去ってから、もう20年以上は経っている。校舎が新しくなったという話しも聞いた気がする。
もし、いま高校を訪ねたとしても、昔の面影などはないだろう。
それは、同級生たちとて同じことだろう。
長い年月で、容姿や体型も変化し、自己紹介なしでは誰だかわからないと思う。
もっとも自己紹介をされたところで思い出せるかは怪しいが
「お。あった、あった」
段ボールの奥の方に学習図鑑を薄くしたような本を見つけて、引っ張り出す。
よいしょ。とおじさん丸出しの声を出して、椅子に腰かる。
アルバムのページをめくると古い印刷物のカビ臭い匂いが鼻腔を刺激した。
僕はこの匂いが好きだ。
パラパラとページをめくり、自分のクラスのページを開いた。
「えっと、カワサキ……。カワサキシンヤは」
顔写真と名前を指でなぞりながら、電話の人物を探す。
いまはひとクラス25人程の3クラス程しかない学校が多いらしいが、あの頃はひとクラス32人で6クラスまであった。
自分が学生だった頃のアルバムを見ていると、改めて少子化を感じてしまう。
あ、いた。と指を止めた場所には、耳までかかる茶色い長い髪をした少年がピースサインをしている姿があった。
「あ~こんなヤツだったなぁ……」
なんて口にしてみても、思い出しているつもりで、具体的にどんな人物だったかは、曖昧なままだった。
一応の目的を達した僕は、なんとなく他のクラスメイトの写真も見てみた。だけど、印象に残っている生徒はいない。
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