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ここ、地元の大型ショッピングセンターの中にあるフードコートで、高校時代からの友人である三河春樹は来月、結婚披露宴の二次会を開くことになっている。
俺は、ショッピングセンターの出入り口へまっすぐに向かった。
駐車場に止めてあった車のフロントガラスには、本物の桜の花びらがハラハラと散っていた。
そういえば、動画の映像は、あのときの吉野桜を撮ったものを使ったものだった。
運転席に座り、乱暴に車のドアを閉めた。
フロントガラスには、三河に首を絞められた後が鮮やかに残っている。
まったく、派手にキスマークをつけられたものだ。
ハンドルに顔をうずめたまま、涙が流れるままに任せた。
気が済むまでそうしてから、どれくらいの時間がたったかはわからない。
俺は、おもむろに車のエンジンをかけて、
「花嫁が花粉症だからって、屋内で花見しながら披露宴がしたいとか、わがままだろ」
ひとり悪態をついた。
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