桜といえばクラス替え

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桜といえばクラス替え

 高校2年に進級した、新学期初日。  青空の下、満開の桜が花を散らせている校庭を、僕は教室から見下ろしていた。  いつものように、窓際の席であくびをしていた僕は、教室の扉を開けた一人の男子生徒に目をひかれた。   代り映えのしない教室に、そっと入ってきた彼は、肩に桜の花びらを一片乗せていた。 「花びら、ついてるよ」  僕が、親切心で、彼の肩から花びらをとってあげると、びくりとして彼は、 「ありがとう」  とだけ言った。 「僕は、三河春樹。君は? 転校生?」  初めて見る彼をそう思ってしまったのは、無理もないことなのだが、彼は、明らかに不機嫌そうにこう言った。 「いや、病気で休学していたんだ。出席日数が足りなくて、一年ダブったんだよ。俺は、滝村隼人。よろしく」 「あ、はい、よろしくお願いします」  僕が、急に姿勢を正して言うと、彼は初めて笑った。 「敬語はいいよ、同じ学年なんだから」
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