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そう言うと、父は車を降りて従者に何事かを伝えて行ってしまった。
しばらくはおとなしく座っていた私だったが、外のさざめきに我慢ができなくなって、再び窓を開けた。
そっと覗くと、たくさんの人と車があった。前の方にはたいそう高貴な人たちがいるのだろう。立派な車ばかりが並んでいた。
私たちの車は真ん中より少し下がったところに停めた。
このあたりにもなると普段は人が通らないのか、草や花がたくさん生えている。
山百合の香りが車の中まで入り込んでいた。
まだ始まるには時間があるからだろう。多くの殿方たちは車を降りてあちこち出歩いたり、車に乗っている女性に声をかけたりしていた。
「姫様、あまりお顔をお出しにならないでください。旦那様から叱られますぞ」
「ちゃんと隠れているから大丈夫よ。お父様から私を叱るよう言いつけられたのね」
その日は、常日頃からうるさく言われている世話係の乳母がいなかったので、気が大きくなっていた。
それで、従者の忠告も無視してひたすら人の流れを眺めていた。
そうすると、にわかに辺りが騒がしくなった。
騒ぎの方を見てみると、何やら立派な車がやってきている。
どんなに高貴な方が乗っているのかしら、と思っていると、私の車を引いていた従者たちも慌て始めた。
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