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「何であのような車がこんな後ろに」
「いいから、早く車をどけなくては」
従者たちはそう言うやいなや、自分たちの車を動かして道を開けようとした。
私はと言えば、突然車が動かされたものだから体勢を崩して転んでしまう。
その拍子に車の後ろの御簾を押しのけて、顔が出てしまった。
私が突然飛び出てきたのを見て、後ろに控えていた従者は顔を青くする。
「申し訳ありません姫様! お怪我はございませんか?」
私は倒れた時にぶつけた頭が痛かったのと、無様に顔を晒してしまったのが情けないのとで、みるみるうちに涙が溢れてきた。
声をあげて泣きだす私に、いよいよ従者たちは焦りだす。
「姫様、どこが痛みますか?」
「姫様、そのように泣かれては可愛らしいお顔が腫れてしまいます。どうか泣き止んでくださいませ」
従者たちが数人がかりで私をなだめていると、例の車が止まった。
何事か、と人々が様子を見ていると、相手の従者がこちらの車にやってきた。
「こちらに来るぞ!」
周りの様子を見ていた従者が、他の者たちに声をかける。
「姫様、人が来ますから車の中にお戻りください」
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