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私は後ろの従者に隠されながら慌てて中に引っ込むと、引き窓を薄く開けて隠れるように外の様子をうかがった。
先ほどまで大泣きだったのに、涙はすっかり引っ込んでしまった。
すでに痛みよりも例の車への興味の方が大きくなっていたのだ。
相手の車を見ると、きらびやかな飾りや模様がついており、子供ながらにただならぬ家の車なのだろうと感じられた。
窓は全て押し上げられており、中に風格のある男性と若い青年がいるのが見えた。
そうやって見ていると、若い方がこちらを見た。
今はもう顔は思い出せないが、その時の彼は私の方を見て微笑んでいた。
私は、目が合ったような気がして、思わず飛びのいた。しかし、好奇心に負けて再びそっと覗いてしまう。
若い貴公子はもうこちらを見てはいなかった。
なんとなく目を離せずにいると、貴公子が突然私の方を見て、再び笑いかけたのだ。
どうやら私が覗いていることを知っているような風である。
私はすっかり動転してしまって、慌てて戸を閉めた。
外からは父の声が聞こえる。騒ぎを聞きつけて戻ってきたようだ。
「姫様に贈り物です」
しばらくすると、話を終えた従者が私に一つの包みと一輪の百合を渡してきた。
白い薄様の紙に包まれていたのは、唐菓子だった。
その紙に流れるような字で何か書かれているのを見つける。
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