宮にはじめて参りたるころ

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 そのまま彼からの手紙は途絶え、結婚の話もお流れとなった。  落ち込む私を見かねたのか、父は私に宮仕えの話を持ってきた。どうして私なんぞにそんな話が来たのかはわからないが、おおかた父が知り合いの伝手を尋ね歩いたのだろう。 「中宮の定子様は、お前と同じ十八歳でいらっしゃる。お前ならきっと良いお話し相手になってさしあげられるだろう」  私はそんな大層な仕事ができるはずもないと思って、父にお断りするように言った。  母も猛反対であった。父が宮仕えの話を持ってきたと聞いて、かなり怒っていた。 「第一、未婚の女が働きに出るなんて、ますます婿が取れなくなったらどうするんですか」 「そうは言うが、私は、今のままではいつまで経ってもこの子は結婚すらできないだろうと思うよ」  私は耳を疑った。  目に入れても痛くないというように甘やかし、いつも私の望む通りにしてきた父である。  今回も私がお断りすれば、諦めて別の縁談を組んでくれるはずだと思っていた。 「お前はよその娘に比べて賢い。だからこそ、賢いだけではいけない」  それなのに、父は珍しく、私に説教のようなことを言って食い下がる。 「だからこそ私は早く結婚して子供が欲しいのです」     
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