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序章
何でもない平日の午後。清原凪は特に何の目的もないまま、見知らぬ商店街を歩いていた。
普段ならこの時間はまだ大学で講義を受けているはずだ。
しかし、突然の休講によって、午後の時間を持て余すことになった。
このまま家に帰っても良かったのだが、凪はいつもとは反対方向の電車に乗っていた。一人で部屋にいると余計なことを考えてしまいそうだったからだ。
凪は現在絶賛就活中である。六月も終わりに差し掛かっている今、周りの友人は徐々に内定が決まりつつあった。
そんな中、凪だけは仲間内で一度も内定が出ていない。今朝来た「お祈りメール」で、記念すべき(本来この表現は不適切であるが、ヤケクソだ)不合格十件目である。
両親はまだ焦るような時期ではない、ゆっくりでいいとは言ってくれているが、凪としてはすでにこの就職活動にうんざりしていた。
エントリーシートや面接で強制的に文章化される自身の特徴や体験がすべて嘘くさく思えてならなかった。凪はもう自分が何をしたくてこんなことをしているのかさえわからなくなってきているのだ。
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