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1,大桜
1,大桜
「わたなべくん、わたしをおよめさんにして!」
この言葉が、つい昨日言われたかのように思えてしまう。
俺が幼稚園児の頃、よく遊んでいた河川敷の所には大きな桜の木があった。今の俺が横になっても隠れるくらいのとても大きな桜の木だったと思う。あの桜は今でも残っているだろうか。
そんな俺も今は社会人。
告白してきたあの子も小学校へ進学すると同時に何処かへ行ってしまったそうだ。今は何をしているんだろう、元気だろうか、どのような感じになっているのだろう。俺は電車の中吊り広告を見ながらそればかり考えていた。
ふと外を見てみると、そこはガキの頃よく遊びに来た河川敷の近くだった。せっかくだから久しぶりにここで降りて土手で寝転んでみようか。
『次は?、唐川?唐川?、お出口は、左側です。』
懐かしいアナウンスが聞こえてくる、やっぱり英語はよく聞き取れないけど。
桜の木に行ってみると、そこには1人の女性がいた。花見でもしているのだろうか。
俺が近づいてみると、
「待ってたよ、渡辺くん。」
突然その女性が振り向いて声をかけてきた。
「え、なんで俺の名前を?」
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