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「はぁ…、私の事忘れちゃったんだ。この桜の木こと覚えているのなら、私のことも忘れないと思ってたのに…。」
桜の木の下…、私のことも忘れない…。まさか、ひょっとして…。
「…なぁ、華。今井華か?」
「そうよ。案外人の見た目って変わるものね。」
嘘だろ…。幼稚園児の頃しか見ていないしよく覚えてないからだろうけど、あの華がこんな感じになったのか。時代も人も変わるものだなぁ。
「今何してんだ?」
「単純にあなたを待ってたのよ、この季節になったらこの桜のことと一緒に私を思い出してくれると思ったから。」
「一日中居たのか?」
「一日中居たら変人扱いされるでしょ。午後だけよ、しかも今の時間帯だけね。」
「ま、たしかにそうだよな…。」
風が吹いている、桜の花びらが空に舞う。
「んで、お前がここにいた理由ってやっぱりあれか?」
「あれがなんなのかよく分からないけど…。」
「ほら、幼稚園の時の約束だよ。」
「あれって言われたからよく分からなかったわ。」
「それで…どうなんだ?」
「ええ、その通りよ。小学生になると同時に転校しちゃったけど、ずっとあなたのことを考えてたわ。」
「そりゃあありがたいな。」
「改めてお願いなんだけどね…」
と華は一呼吸置いて言った
「私と付き合ってください。」
幼稚園の頃と違って落ち着いた告白であった。
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