ラビリンス

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僕らが驚愕して立ち尽くしていると 「おまえら…逃げろ」 とヤツの足元には新井が苦し気な顔で床に這いつくばっていた やられたんだ…僕らは後退りしていると 「アアアアア」 とヤツはまたにじりよって来た 悲鳴をあげ 今きた道を引き返し階段をかけ上がり 目に飛び込んできた教室に身を隠した 「な、なんなんだアイツは幽霊なんかじゃねーよ」 「あれは俺たちを殺す気だぞ!」 「まじヤバいて」 「お前が来ようなんていうから!」 僕と松山は小声で醜く口論しているなか 菊池はシクシクと泣いている と物音がし僕らが隠れている教室にヤツが入ってきた 息をころし散乱した机の影にいたが 、ヤツはだんだん近づいてくる 心臓が高鳴り冷たいものが身体を通り 緊迫した緊張感に今にも泣き出したい気持ちのなか 「うああああ」 と松山は悲鳴をあげ物陰から飛び出すと 教室を駆け出し出ていった ヤツはそれを見つめるとゆっくりとあとを追って去っていった しばし沈黙が流れ 僕は解放された気持ちで安堵の溜め息を吐いたあと怒りがこみ上げてきた あの野郎…1人で逃げ出しやがった! 松山に苛立ちを覚えたが今は誰かを助ける余裕がないのもわかる 僕だって本当は今すぐにでも逃げ出したい… でも…小さく固まる菊池を見つめると震える声を抑え 「アイツは松山を追ってた今なら逃げだすチャンスかもしれない…怖いだろうけど走れる?」 菊池は力強く目をつぶりコクりと頷いた こん所でヤられてたまるか 逃げだしてやる 情けない松山の行動に少し冷静になれたか 僕は菊池の手を掴むと静かに教室を後にした
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