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高校2年生の帰り道、付き合ってはいないけれど、付き合いそうな雰囲気の私たちは、下駄箱から自転車置き場に向かって歩いていた。
「雨うっとうしいね」
「本当そうだね」
春木君は私の言うことに肯定的だ。
だから一緒にいて苦にならないのかもしれない。何より沈黙が全く辛くならない。
「飴食べる?なんか面白い味のやつでてたから買ってみたんだ」
私は七色の飴というキャッチコピーの飴を差し出す。
春木君と私は飴を口に入れる。
「まっず!」
二人で苦笑いしながら二階の自転車置き場にたどり着く。
自転車の鍵を開ける。
「これ、本当まずい、どうしよう。捨てようかな」
「そうしよっか」
「あ、私ティッシュ持ってないや・・・」
すると春木君は二階の自転車置き場から、下の側溝を見下ろした。
捨てちゃお?と春木君は言葉に出さずににやっと笑った。
「せーの」
と、春木君が言のと同時に飴を吐き出す。
春木君の吐いた飴は見事に側溝に落ち、私が吐いた飴は側溝に入らずにコンクリートに音を立てて砕けた。
「あーあ」と笑う春木君。
数ヶ月後、あの飴は占いだったんだなと思う事実を知った。
春木君には、私ではない、別の 彼女が出来ていた。
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