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そこには、人形が座っていた。
小柄な体に、白い肌。肩までかかるボブカットには、ストレスによって変色した白髪が混じっており、膝の上で組まれた腕は、微動たりともしなかった。
光を失った瞳。固く結ばれた口元。そして、痩せこけた頬。
あの、猫のように自由で、見ているだけで癒されるあの笑顔は、そこにはなかった。
「仕事先で……上手くいかなくてね、それに耐えられなかったから、橋の上から、飛び降りて──」
──そっか。三春も、私と同じだったんだね。それなのに、私を助けてくれたんだね。
「……ありがとう。三春」
三春。自分のことを二の次にして、私を助けたんだね。あなたの悪いところだよ。私と似てるんだから、知ってるよ。
本当に、三春はお人好しなんだから。
私は、三春に向かって微笑んだ。
「今度は、私の番だからね──三春」
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