天使のドアホン

4/19
前へ
/19ページ
次へ
世の中は暗い。それは当然のことだ。 笑顔。努力。我慢。これまで人生を歩んできた中で、何度もやりたくないことをやってきた。そうしないと生きていけないからだ。 だが、現実は甘くなく、社会に出たらそれ以上のことが待っていた。 だから、せめて自分の時間くらいは、明るいものを見ても良いはずだ。 芸能人が出産した話でも良い。誰かが結婚した話でも良い。いっそのこと、現実にはいないようなキャラクターが明るく笑っているアニメでも良い。幸せを感じられるような、優しい光を浴びたかった。それがちょうど一年前のことだったのだろうか。 それから、優しい光を探して、心からくつろげるような時間を作ることが、私の生き甲斐となっていた。だが、暗い洞窟の中を懐中電灯で探索するような日々を続けていくうちに、私はだんだんと疲れていた。 明るいことはないのだろうか。世の中に。 これ以上探しているうちに、枯渇してしまったら、私は一体どうやって生きていけば良いのだろう……。 大学時代の友達が、私によく言っていた言葉がある。 『絶対に、自殺しないでね』 当時の私は、その言葉を真に受けることは無かった。 だが、最近は事あるごとにその言葉が脳裏をかすめてしまうのだ。
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加