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「よっ。遊びに来たよー。絵美里」
三春は、仕事終わりなのか、コートの下にスーツを着て、いつもと変わらない笑顔を見せている。
とりあえず部屋に招くと、彼女は遠慮もせずにカーペットに転がり込み、大きく背伸びをした。
「三春……あんた、最近よく来るわね。一体どうしたの? こんな時間に」
急須でお茶を淹れてから、彼女に渡す。
「近くに来たから寄っただけだよ。絵美里の家近いから便利だよね」
「来るにしても時間帯があるんじゃない?もう夜の十時だよ」
「まぁまぁ、細かいことは気にせずに」
彼女は大学時代からいつもこうだ。猫のように気まぐれで自由。一緒にいる私はいつも振り回されてばかりなので、彼女といる時間はとても疲れる。
もし私のように優しい人間じゃなかったら、きっと彼女のことを嫌うのだと思う。
「いやー、しかし絵美里の部屋は綺麗だねぇ。私もこんな部屋に住みたいなぁ」
「働いて買えばいいでしょ。三春だってもう大人なんだから」
「はぁ、誰か金持ちの人とでも結婚したら、家なんてすぐ買えるのに」
「甘いこと言わないで、頑張りなさい」
「うわー、相変わらず絵美里は厳しい……」
「違う。当たり前のことを言ってるだけ」
冷たくする理由は、明らかだ。
私は忙しいのだ。正直、三春に付き合っている場合じゃない。また明日のことを考えて、準備もしなくちゃいけないのに、こんな奴に付き合っている場合じゃない。早いところ帰って欲しいのだ。
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