桜の時期に旅に出た

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とにかく見事な桜で、駅は満開の桜に囲まれていた。 それを楽しみつつ改札を出た。 晴れた空の下、舞い散る桜の中を歩くのはなかなかよかった。 しかし、平日とはいえ春休み。 やや出発が遅かったとはいえ、昼下がりの午後。 なぜか人がいない。 まったくいないわけではないし、満開の桜のおかげか淋しい感じはしない。とりあえず無人の旅行案内にあった簡単な地図を手にして、()いてしまう気持ちを抑え、駅の向こうにも見えた桜色の景色を目指して歩くことにした。 こんなに素晴らしい花ふぶきを、ひとりで観ているのはもったいない。 それくらい綺麗な桜で、とても素敵な時間だった。 美しい花びらがひらりひらりと舞っている。 その中をゆっくりゆっくり、のんびりと歩く。 こういう景色に出会いたいがために、私は旅に出る。 静かで穏やかな時間(とき)の中を気ままに歩く。 これこそが途中下車の醍醐味(だいごみ)である。
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