東軍側

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もちろん、今はそんな形跡はない。その時の頭蓋骨(ずがいこつ)が転がっているわけではない。関ケ原の戦いは、今から400年以上も前のこと。 血なまぐさい物はなく、穏やかな、ふつうの人が暮らすふつうの町だ。 桜が一面に咲き誇り、とても美しくのどかな町だ。 この他にも、いろいろな場所で石碑と亡くなった方々を供養するための祠が建っているのを見かけた。桜がひらひらと舞い散る関ケ原の町で、ひとりで歩いてそれらを見ていた。 陣跡をぼーっと見つめる。 風がサヤサヤと樹々を揺らす。 その音しか聞こえない。 どんなに悲惨なことがあった場所でも、緑は生え、すべてを覆いつくす。 何もなかったかのように。
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