キス、の効能。

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 触れた指先から熱が伝播する。じんわりと指先を痺れさせて、体の芯に向かって赤く染められていくみたいだ。  パッと見開かれた睫毛がおずおずと伏せられて、目元が赤く綻ぶ。座卓を挟んだ距離を飛び越えたい衝動にかられる。赤い目の際に潜んだ涙腺が、じんわりとそこを潤していくのが見えた気がした。  触れた指先で、眞澄が頷くのを感じた。  閃光が走ったみたいだった。  背中から首筋にかけて一気に震えが走って、明らかな欲情が心臓を高鳴らせる。  パッと上向いたはずの顔が下唇を噛んで更に顎を引く。十分に潤った瞳は反射した照明の明かりを内に滑らせていた。  「……したい、です」  きゅっとつり上がった眼が、一層、挑むように啓太をみた。挑発的なその表情は、小生意気にも、怯えたようにも見えた。  喉に、息が詰まる。  このままこの手を、指を滑らせて、噛み締められた唇に触れたい。衝動は行動となって、柔い唇に触れる。乾いているように思えたそれは濡れてはいないが、しっとりと吸い付くように心地よかった。  「でも、怖いです」  か細く震える声に、唇の中央で指が惑った。上唇と下唇の間は、一層肉が張り詰めていて弾力があった。  「……俺、いろいろ、判んないんです。」  目尻の方に向かって伸びた睫毛が観念するように震えて閉じる。閉じて薄く開く。  「男同士のセックスもこの間はじめて知りました。フェラとイマ?イラ?マチオ?の違いもわからないし、先輩のちんこが長尺バットとか言われても、長尺バットがなにかも、わからないし、」  「長……」  何てことを言われてんだ。
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