キス、の効能。

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 多分、言葉を選ばずに伝えたら、眞澄が引いてしまうようなことを、考えてる。  例えば、その白い顔にもう一度白く濁ったのをぶちまけたいとか。さっき、眞澄が口にした言葉を全て理解できるように実演で教えたいとか。そんなのだけじゃない。  背後にちらつくベッドなんて見なくたって眞澄の顔を、姿を見るだけで、触れたい、抱き締めたい、が胸を締め付ける。  それはこの部屋でだけのことじゃなくて、移動教室で見掛けても、授業中に偶然見下ろしたグラウンドで長距離走ってる姿にも、生徒会で集まってるときだって、  その服を全部引き剥がして触れたい。  その手で、その唇で、肌で、触れられたい。  今、その無垢な眸を、友達と笑う表情を全部汚してしまいたい。  かなり控えめに表現してもこれだ。誰にも見えない、聞こえないことをいいことに、もっとスゴいことを考えていることなんて、ざら。  「じゃあ、」  瞳に張った淡い水の膜が光ながら揺れる。揺れながら、まっすぐに見つめてくる。  そういう目をされるから、強引にできない。  手八丁口八丁を駆使して手込めにしてしまうことができない。  ―――両想いになっても、手強い。  それは嫌な感覚ではなく、寧ろこそばゆく胸を締め付ける。締め付けるのに、その痛みはなんだか温かい。  「じゃあ、先輩に欲情してもいいですか」  真剣な顔で、いつのまにか居住いまで正して、発した台詞がこれなら、本当に眞澄の語彙使用能力は壊滅的だ。
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