192人が本棚に入れています
本棚に追加
多分、言葉を選ばずに伝えたら、眞澄が引いてしまうようなことを、考えてる。
例えば、その白い顔にもう一度白く濁ったのをぶちまけたいとか。さっき、眞澄が口にした言葉を全て理解できるように実演で教えたいとか。そんなのだけじゃない。
背後にちらつくベッドなんて見なくたって眞澄の顔を、姿を見るだけで、触れたい、抱き締めたい、が胸を締め付ける。
それはこの部屋でだけのことじゃなくて、移動教室で見掛けても、授業中に偶然見下ろしたグラウンドで長距離走ってる姿にも、生徒会で集まってるときだって、
その服を全部引き剥がして触れたい。
その手で、その唇で、肌で、触れられたい。
今、その無垢な眸を、友達と笑う表情を全部汚してしまいたい。
かなり控えめに表現してもこれだ。誰にも見えない、聞こえないことをいいことに、もっとスゴいことを考えていることなんて、ざら。
「じゃあ、」
瞳に張った淡い水の膜が光ながら揺れる。揺れながら、まっすぐに見つめてくる。
そういう目をされるから、強引にできない。
手八丁口八丁を駆使して手込めにしてしまうことができない。
―――両想いになっても、手強い。
それは嫌な感覚ではなく、寧ろこそばゆく胸を締め付ける。締め付けるのに、その痛みはなんだか温かい。
「じゃあ、先輩に欲情してもいいですか」
真剣な顔で、いつのまにか居住いまで正して、発した台詞がこれなら、本当に眞澄の語彙使用能力は壊滅的だ。
最初のコメントを投稿しよう!