虎、馬る。

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 ―――俺が、見たいのに。  啓太の手がするすると肌に触れる。  それは酷く心地よくて、心臓が忙しなくなるのに落ち着く。躯の奥に幾つか燭台があって、それに順番に灯を点されているみたいだ。  「せんぱ、おれっンぅ」  俺が、見たいのに。  舌を入れるキスだけで頭のナカがかき混ぜられて恥ずかしいのも後ろめたいのも訳がわからなくなる。息が苦しい。頭がぼうっとする。耳の奥でくち、くちゃ、とイヤラシイ音がする。その度に腹の奥がきゅぅぅぅぅって切なくなる。  「嫌?」  息継ぎの合間に聞かれる。  嫌なわけがない。気持ちいい。腹が、胸があったかい。  ―――俺が、触りたいのに。  言いたい言葉は腹の中で暴れるのに上手く言えなくて困る。引かれないように、ガッカリされないように上手く伝えるにはどうしたら良いのだろう。  見たいです。触りたいです。  素直にそういってもいいんだろうか。  言葉なんて選べなかった言葉を啓太は受け入れてくれる。もっとが止まらなくなる。  「ン、」  くちゃ、と、舌が歯の間に潜り込んでくる。戸惑いながらその舌に自分の舌を添わせる。舌で舌の裏を撫でられる。唾液が、溢れてくる。飲み込めなくて、口の端から溢れる。  呼吸を忘れそう。
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