虎、馬る。

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 シャツの裾を捲り上げてかさついた掌が腹に触れる。一瞬ビックリして体が逃げる。でも、触られる手の温かさに強張りが解ける。触られるのを喜ぶ心臓が、ピョコピョコ跳ねるんだ。  もっと触って欲しい。もっと触りたい。もっとくっついて、もっと傍に来て、誰よりも、一番、近いトコに。  ―――なんで。  こんな風に、貪欲なんだろう。受け入れてもらえた。それだけで嬉しくて、並んで歩けるだけでキセキみたいだって、思っていたのに。  「ん、ぅ……」  薄いアンダーアーマーに触れる。艶々したその肩が指先に触れて、つるつる逃げる。  「ふ、あ……」  頭ン中、ちゅーでイッパイになる。先輩が好き、で、イッパイになる。  「ン、あ、ん」  太い指先が、シャツに潜り込んで、期待してたみたいに膨らんだ乳首を弾く。びりびりびりって、電気が走る。耳の奥がキンとした。  背筋がびくって伸びて、尾骨にじんじんしたのが走る。  ―――尻、が、モゾモゾする。  尻って言うか、腹って言うか、下半身の要所要所がモゾモゾして忙しなくて落ち着かない。  ―――これじゃあ、また、訳がわかんなくなる。  それは、ダメだ。自分だけが気持ちよくなって、訳が判らなくなって溶かされてしまう。そうなったら、多分。  「だめ、です」  多分、先になんて進めなくなってしまう。
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