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人差し指がするりと、てっぺんに触る。ふるりと、体が震える。息が熱くなる。ジンジンが心臓の拍動と同じリズムを刻む。
「ダメ?」
啓太の声が、鼓膜を震わせる。それは吐息を含んでいて耳殻を擽って首筋を粟立たせる。
「嫌だった?」
啓太の声は潜められると一層甘くなるんだと知った。その声で、もっと、もっと何か言って欲しい。教えて欲しい。応えて欲しい。
―――好きだって、言って欲しい。
きゅぅって、胸が、狭くなる。強請ることなんておこがましくてできない。できないけど。
「好きだ」
密やかに、注ぎ込むように言われた言葉に、瞼が開く。
鼻の奥、つんとする。
「う、わ、」
「え、え?なに?」
急に目の中の水位が上がって動揺した。目の前が一気にぼやけた。
なんで、なんでなんで。
声に出していない言葉まで、伝わっちゃうんだろう。
言葉にできないのに。わかってしまうんだろう。
「なんでも、ないです。なんでもないんです」
溢れそうになったのを慌てて拭って、焦ってる啓太の頭を両腕で抱いた。
「好きです、俺も、好きです」
ああ、好きでいていいんだ。
自分を曝けても、好きだと、言ってくれるんだ。
あり得ないと思っていた幸せと以心伝心が、ちゃんと自分にも用意されていたんだ。
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