虎、馬る。

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 センパイは、  俺より年上で、背も高くて、筋肉質で、かっこよくて、優しくて、いつも余裕があって、  そう、思っていたのに。  なだらかに山を作ったジャージの頂をそっと撫で擦る。  「っ……」  首筋に埋まった啓太の唇から、熱い息が漏れて肌を擽る。  ―――可愛い。  形を確認するにはまだ躊躇いがあって鳥の雛を撫でるような、軽い触れ方になってしまう。それでも少し、指先に力を入れたり、爪の先で引っ掻くと、ひくん、と啓太の背中が跳ねて、抱き締めてくる腕が強くなる。お腹の中が温かくなって胸が狭くなって、なにかが溢れそうだ。  ―――どうしよう。  「ますみ、」  呼ぶ声が掠れている。  「もっと、強く触って」  小さく、小さく囁かれる赤裸々。そっと、ばれないように顔を引いて啓太の表情をうかがう。  キュウゥゥゥゥって、心臓、小さくなる。  堪えるように殺した息が、噛み締めた歯の隙間から漏れる。眉間に寄った皺を、こんなに間近で見た人間は、何人いるだろう。細められた目の中に溜まった水の色に、胸を締め付けられた人は、俺以外にいるのかな。  「ますみ、」  甘くて、穏やかな声がかえってイヤらしい。もっと聞きたい。尻尾の名残の骨が、ずきずきする。  ウェストから指を忍び込ませる。啓太の息が詰まる。下着の、薄い布地の天辺が濡れてる。  ―――先輩、気持ちいいんだ。  それは、すごく嬉しくて、腹の中がじんわり温かくなる。自分の手で、指で啓太の体が変化するのが嬉しい。気持ちよくなってくれてるのが嬉しい。
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