虎、馬る。

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 指に、垂れてきた水分が触れる。指と啓太の間に染みて手がすべる。しっかり握ってないと抜け出てしまいそうで、力を籠めた。  「っは、」  溜めた吐息が耳に触れる。そこから熱と痺れが広がる。下半身が、じんじんする。性感的なのもあるけど、  ―――膝、痛くなってきた。  立膝のままでいるせいで、床の硬さに膝が痛くなる。背中を抱きしめられていなければ腰が落ちそうで、集中できない。  「せんぱい、せんぱい」  「あ。なに?」  いつもの啓太からは想像できないくらい間の抜けた声。体を離してこちらを覗き込んできた顔が上気していて切なげで。  ―――う、わ……  そんな顔を、するのか。エッチなことに頭が馬鹿になってるみたいな顔。いつも、きちんとしていて、精悍で、かっこよくて、卑猥なことなんて、考えていないみたいな先輩が。  胸の奥も腹の奥もぞわぞわしてもっと見たくなる。また、貪欲な自分が顔を出す。欲情する。  「ベッド、乗って良いですか」  「あ、ああ、ごめん」  今気づいたように啓太は左手で目元を拭い、ベッドに乗り上げて胡坐をかいた。むき出しのソレが目に入って眞澄は身を固めたまま目を逸らした。  ―――これは、ヤバい。  同じベッドに登りながらどうしたらこんなのが自分の体に入るのか考えて頭が真っ白になった。  ―――長い、し、すごい、反ってる……  「ますみ?」  対面に正座したまま動きを止めた眞澄を伺って啓太は小首を傾ぐ。少し身構えたのが判ったように今まで弛んでいた目がぎゅっと焦点を定める。その様が大型犬のようでいつもなら愛おしいのに今は忠犬に見せかけた猟犬のようで少し怖い。怖いけど。  「好きだよ」  そうやって口付けられたら何も言えなくなる。  言えなくなるけど。
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