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―――俺、スゴい、エロいこと、してる。
思い至ったらどうしようもないくらい恥ずかしくなった。恥ずかしくなるのと一緒に見たことのなかった啓太の一面が少し怖くて、でも、なんにも考えられなくなるくらいかっこ良くてどうしたら良いのか判らなくなった。ベッドのヘッドボードに上半身を預けたまま胡座をかいて熱い息を吐く啓太は病気にかかったみたいだ。こういうのを欲情と言うのなら自分も同じようになっているのだろう。そう思うと更に恥ずかしくなる。
啓太は男らしくて、精悍で、格好良い。だから、こんな風に欲情してても、格好いい。でも、俺は。
「ますみ?」
熱病に浮かされながら正気を保とうとするみたいに啓太は丁寧に名前を呼ぶ。強い両腕が伸ばされて眞澄の左手首と右の二の腕を掴んで引き寄せた。
「ごめん、もうちょい、触って」
「ヒゥッ?!」
絶え絶えの声がねだる。
鼓膜から股間にきゅぅぅんって、何かが走る。痛くなる。思わず腰が引ける。普段と違う啓太の姿を見た。それだけで、胸が高鳴る以上に
―――勃った……。
触られていない場所が痛いくらい張り詰めて苦しくなる。苦しそうな、気持ち良さそうな、切羽詰まった啓太の顔が堪らなくてジュクジュクと下腹部と言葉にするには憚られる場所が疼く。
「眞澄?」
「ごめん、なさい、俺、」
俯いて呟く眞澄の頭にすりりと何かがかする。それは掌ではなくて、指でもなくて
「やっぱ、無理そ?」
額に触れていた頬が離れる。状況把握のままならない啓太は息を詰めて、一瞬切な気に眉間に皺を作って、それから笑った。その顔が淋しくて、辛くなって眞澄は首を横に振る。そうじゃなくて、俺が先輩を気持ち良くしたいのに、啓太の声だけで、表情だけで興奮して、苦しくなって、動けなくなってる自分がいる。
「つ、」
「つ?」
恥ずかしくて、これ以上赤くなることなんてないだろうと思っていた顔が、更に熱をもつ。言って良いのか、言うべきじゃないのか迷い、口ごもって上目に見た啓太が、待てを言いつけられた大型犬みたいに静かに、呼吸の音をさせていた。
「……連れて、勃っちゃいました……」
掠れるように小さくなった語尾まで啓太の耳はしっかり拾い上げる。
正座のままへたり込んだ眞澄の二の腕に啓太の手が巻き付く。それは薄いシャツを透過して熱くて火傷しそうだ。
「俺も、触る。」
「でも、それじゃぁ、」
すぐ余裕なんてなくなっちゃうのに。
今日は俺が触るって言ったのに。
「眞澄だって、苦しいでしょ」
その通りだ。
黙って触れずにいればやり過ごせる段階ではなくなってしまった。下着の中で膨らんだ自身はもう既に染みて濡れちゃうくらい溢れてる。
「先にヌイてあげられればいいんだけ、どっ」
自分が言葉にしたことを想像して啓太の息が詰まる。耐えて、一瞬、昂りをやり過ごす。
「ちょっと、ムリ」
浅く、深く、息を吐く。
「俺も、余裕、ない。もっと、眞澄に触って欲しい。」
その声が、目がまた耳の奥を張り詰めさせて、アソコを直撃する。
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