虎、馬る。

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 ゼンブゼンブ、俺のものと言いきれてしまえばいいのに。そうするためにはまだ、眞澄の信頼は厚すぎた。啓太だって、通常の、或いはそれ以上の欲求を持っている。でもその欲求は眞澄の示す厚すぎる信頼を前にするとどう出せばいいのか判らなくなる。少しずつ少しずつ小出しにするには、あまりに自分は若すぎて性欲の手綱を握るのに、苦戦を強いられる。  「ン、ふぁ」  指の腹で蜜の溢れる先端を躙る。ぶるりと大きく眞澄の体が震える。先端を弄られるのが怖いと涙混じりの声が言ったのが頭の奥に聞こえる。でも、これが気持ちいいことを、啓太は知ってる。同じように眞澄が感じることを、啓太はわかっている。  「痛い?」  吐息を含ませて問いかけると小さな頭が横に振られる。短い髪が首筋を撫でる。  「……きもち、ぃ、です。」  項の赤いのが視界の下のほうに確認できる。  その声が鎖骨に触れてそこから熱が伝わってその声だけでまた、一層催す。指を揃えてその腹で順繰りに撫でる。亀頭が撫でられて先走りの蜜が纏わり付く。纏わり付くのに、その潤いは指先に移った端から乾いてしまう。  「ア、ア、ア、」  呼吸の間を取れずに痙攣するように腹が震えている。腰の震え方で後がひくついているのが判る。そこに触りたい。でもそこまでは多分まだ無理。  ―――無理、だよなぁ。  考えるだけで下っ腹とナニが痛くなる。手の動きが乱暴になるのがわかる。  「ひんっ、ア、ふあ、せん、ぱいっ、センパイっ」  半ば泣くような声に眞澄の顔を確認する。元々白い顔は紅潮して真っ赤だ。涙で潤ませた目も真っ赤でだらしなくなった口元がつやつやとてかってる。  もっと、ぐちゃぐちゃの顔を見たい。  いつものあの涼やかな顔が涙だけじゃなくていろんなものでぐちゃぐちゃになっている顔を見たい。でも見たらもっとぐちゃぐちゃにしたくなる。  肩にしがみついた白い手を取る。眞澄の息が深くなる。表情を確認しないままでその白い、意外に大きな手を自分の股間に導く。指先が触れる。目の前の肩が跳ねる。  「触って、」  宥めて。その手で、触れて、治めて、この熱を。  「お願い。」  息を止める音がする。それは一瞬のことで、おずおずと触れた手が幹を握る。  「ああ、」  声に色づいた息が漏れる。息を飲む音。腰が揺れる。無様に動物みたいに。肉刺のない掌はそれでも男のものらしく肉が薄く堅い。躊躇いがちだった動きが次第に大胆にさすってくる。同じようにしてやると鼻にかかった甘い息が首筋を何度も擽って、茎の中が閉じたり開いたりを繰り返す。心臓が脈打って睾丸の付け根が世話しなくなる。  「も、出そう」  「俺、も、俺も、射精(イキ)、そ」  小さい声が応える。応えるのと同時に少し、強張る。強張って、弛緩した。それを曖昧な頭で確認して啓太は自分の手を眞澄の手に重ねると、ぎゅっと力を籠めた。
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