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「里中くん、離して」 「離したくない」 「叫ぶわよ!」 「この部屋、防音になってるから、いくらでもどうぞ」 「やだ、お願い、離して!帰らせて!」 強く強く両手を振るのに、慧の手は千奈津の手を離さない。 千奈津の眦に滴が浮かぶ。 「かわいい」 「何言ってるの!お願い、もう帰りたい!」 身体を乗り出して、千奈津の目元を唇を這わす。 千奈津はビクッと身体を跳ねさせ、止まらない震えが更に酷くなった。 「ずっとこの部屋で、あの絵画を見ていればいいよ」 慧がちらりと向けた視線の先には、千奈津が好きだという窓。
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