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いらない、帰る、警察呼ぶわよ。 あらゆる言葉を叫ぶ千奈津に、慧は人生で最高の笑顔を見せる。 「千奈津ちゃん。大事に大事にしてあげる。これから、ずっと。僕が生きている限り」 激しく首を振る千奈津の身体を押し倒し、慧の手はゆっくりと動いた。 * 静かになったリビングに、慧の息遣いだけが響く。 かわいい千奈津は大人しくソファーに座り直して、窓がよく見える位置にいる。 かわいい声は捨てがたかった。 笑顔が1番好きだったけど、それも仕方がない。 「僕はさ、千奈津ちゃんのことが大好きなんだよ。どうしようもなく好きだから。だから、千奈津ちゃんはずっとここに座っていて。これでもう僕のことも、この絵のことも忘れられなくなるでしょう?」 スッと千奈津の頭を撫でる。 ああ、髪の手入れも忘れてはいけないな。 そう呟いた慧はリビングの掃除を始めた。 *終*
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