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「お邪魔します」
「どうぞ。散らかってるけど」
少し照れたような表情を浮かべて、千奈津は慧のマンションを訪れた。
靴を脱ぐ時に、焦茶色の髪がさらりと肩から流れ落ち、俯き気味に伏せられた顔には長い睫毛の影が落ちる。
ああ、綺麗だ、と慧は溜息を零した。
まるでデッサンモデルをするために創られたような整った顔と均整の取れた体型。
背は高すぎず小さすぎず、慧にとってはちょうどいい高さに思えた。
靴をきちんと揃えた千奈津を10畳程あるリビングへと案内した。
「綺麗じゃない」
「千奈津ちゃんが来るから片付けたんだよ」
「そうなんだ。ありがとう」
これくらい大したことじゃないよ、と慧は笑う。
今日は入社半年で行われた研修の報告書を2人でまとめるため、慧のマンションを使うことにした。
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