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その日から約半年をかけて、慧は千奈津の気を引いては距離を縮め、頃合を見て口説いた。
慧の告白にいい笑顔を見せてくれた時には、歓喜で涙を流しそうになった。
慧は決してイケメンと呼ばれる類の人間ではない。
中肉中背で、平凡な顔つきをしているし、何か突出した特技があるわけでもない。
ただ、「優しいね」と誰にでも言われる好青年であった。
慧はその「優しい」ところを最大限に活用し、周りも牽制することで千奈津を得ることができたのだ。
「千奈津ちゃんは、その景色が好きだね」
今日も慧のマンションの窓の外を眺めていた千奈津に声をかける。
「窓の外の景色も好きだけど、この窓枠を含めた景色が1枚の絵画を見ているようで好きなの」
なるほど、と思った。
普通は景色と言えば、窓の外に広がる風景を見るものだろうが、千奈津はこの窓枠も含めて楽しんでいるのだ。
こういった感受性豊かなところも、千奈津のいいところであり、慧の好きなところでもある。
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