20人が本棚に入れています
本棚に追加
「じゃあ、晴れの日と雨の日、どっちの絵画が好き?」
「断然、雨の日。この窓には雨粒がよく当たるから、昼間でも幻想的に見えるの」
「そうなんだ」
流石に天気を変えることはできないから、雨の日は意識して、マンションに呼ぶことにしよう、と頭の中の千奈津メモに加えた。
慧も千奈津も穏やかな性格をしているため、喧嘩といえるものは1度もしていない。
いつも2人で笑っていた。
慧が「好きだよ」と言うと、千奈津は眉尻を下げて笑ってくれる。
千奈津は恥ずかしがって、なかなか「好き」とは言葉にしてくれなかった。
それはいい。それは、よかったのだ。
慧にとっては、千奈津が自分だけを見てくれていたら。
そう。見てくれているだけで、よかったのに。
千奈津は少しだけ余所見をした。
最初のコメントを投稿しよう!