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「金曜日、荒川さんとどこに行ってたの?」
千奈津をソファーに座らせ、その前に膝立ちになった慧が穏やかな声で話しかける。
「どこって、ただ退勤する時に一緒になっただけよ。どこにも行ってない」
「でも、その日は予定があるって言ってた」
ジリッと慧の身体が千奈津の方へ近づく。
「あの日は友達とご飯に行ったの」
「友達……本当は荒川さんと2人でご飯を食べに行ったんじゃないの?」
また少し、ジリッと近づく。
「違うよ、晶と会ってたんだよ」
ふるふると首を振る千奈津の表情は、いつもの笑顔が消え、戸惑いと言い知れぬ恐怖とで強ばっている。
「晶って、本当に女の人?晶なんて、男の名前でもあるよね」
「高校からの女友達だよ。前に話したことがあるでしょ?」
「他の人が噂してるのを聞いたんだ。千奈津ちゃんには彼氏がいないって。どうして?僕は千奈津ちゃんの彼氏じゃないの?」
ジリジリと擦り寄った慧の身体は、千奈津の膝に触れた。
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