20人が本棚に入れています
本棚に追加
「彼氏!?私はちゃんとお断りしたよ」
「嘘だ。僕が好きだって言ったら、笑ってくれた」
「ちゃんと『ごめんなさい』って言ったわ!」
慧の手が、千奈津の両手を握り締める。
その瞬間、千奈津は我に返り、その手を振りほどこうとしたが、思いの外強い力で握られてしまい、離してもらうことができない。
「ここにもよく来てくれたでしょう」
「他にも人がいたわ!」
「僕は千奈津ちゃんだけを呼んでいたはずだよ」
最初の1度だけ、千奈津は1人でこの部屋に来た。
その後は他の同期の人も一緒に来ていたが、慧には千奈津だけが大事で、千奈津だけを見ていた。
他の奴ら?
そんなもの、知ったことか。誰が来たかすら覚えていない。千奈津はここに来て、この窓から外を見ていただろう、と慧は言う。
慧の静かで、異常な怒りに千奈津の身体は震え始める。
最初のコメントを投稿しよう!