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好きなものは我慢が出来ない! それって、普通の事でしょ? 気付けばいつも何かを口にしている。それがわたし、一之瀬桜月13歳!
「桜月、新作食べていく?」
「新作!? た、食べたい! それって、粒? こし?」
「はは、今回は粒の方かな。ちょっと苦手なんだっけ? やめとく?」
「と、とんでもない!! 新作ってだけでもう……あぁ……」
「桜月っていいね。そうやって美味しく食べてる姿がすげー可愛い」
「いやぁ~それほどでも……」
彼の名前を知らないけれど、いつか聞けるその時は鋭い甘さで、わたしの口はいっぱいになっているのだろうか? そんな彼とは、同じ学校で偶然にも出会うことになる。年上と年下。会ってる時は常に何かを口にするわたしを見て笑顔になるカレ。そのうちお菓子じゃなくて、彼だけを見ていくのかな?
彼はわたしが口しているお菓子を優しく奪い取り、甘える……そんな変な恋の関係になっていく――
中一の春から夏に変わる頃、外は穏やかな風が吹いていて学校の中庭の芝生みたいな所で、わたしは堂々と風呂敷を広げて丸いおはぎを頬張っていた。
甘い物が主食と言ってもいいかもしれない。それくらいわたしは甘い物に目がなくて、数か月経った辺りでクラスの友達はわたしを甘ちゃんと呼ぶようになっていた。
そんなこんなで、外の中庭で大好きなおはぎを口にしようとした時、数人の男子たちが物珍しそうにわたしを見ていた。知らない風に話していたからたぶん、先輩だと思う。その中に、カレがいた。
「なぁ、あの子見ろよ! スゲー甘そうなモン大量に食ってんぜ? ありえねー」
「可愛いけど、オレは甘いの無理だな。残念だ……」
「……あれ? もしかして、桜月さん?」
「えっ?」
「やっぱり! 桜月さんだ。こんにちは、今日もウチのおはぎを食べてくれてありがとう」
「こ、こんにちは。あの、先輩だったんですか?」
「うん、そう。って言っても一つだけの先輩だけどね。桜月さん、今日の帰りにまたうちに来れるかな? 一緒にお団子でも食べよう? みたらし団子、好き?」
これって、何の運命なんだろ? その前に、先輩の名前を聞き出さないと駄目だよね。
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