1.始まりは甘いモノ

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「ん~~~!! この甘じょっぱさが美味しい! あ……あの、先輩。先輩に聞きたいことがあるんです」 「うん? 何かな」 「わたしだけ名前で呼んでもらってるじゃないですか~。先輩って言うのもいいんですけど、お名前で呼びたいな、と」 「あれ? 教えてなかったっけ。ごめんね、俺は三家成希(みやなるき)。いつも買ってくれてるおはぎの包装紙見てない? 三家のおはぎって結構有名なんだ」 「えっと、成希せんぱいって呼んでもいいですか?」 「うん、よろしくね桜月さん」  いつも買っていたのにちっとも見ていなかったなんて、何だか恥ずかしいな。  それでもわたしは、名前が聞けたことに物凄く感動しながら、みたらし団子を美味しくいただいた。 「桜月さんは本当に美味しそうに食べるよね」 「だって美味しいんですよ? 笑顔が出るのは当たり前なんです」 「うん。桜月さんさえよかったらさ、今度はケーキでも食べようか?」 「ホントですか!? わたし、ケーキ屋さんも常連なんです。成希せんぱいとはこうやって、和菓子の三家で出会えましたけどね~」 「そっか、桜月さんは甘いもの屋さんが顔見知りなんだね(出会えて良かった)」 「え?」 「ううん、何でもないよ」  和菓子屋さんだからこそせんぱいに出会えたのかもしれない。幸せな時間と甘い時間が過ごせるなんて思わなかったなあ。  今度は、ケーキ屋さんでせんぱいと会うなんて、きっとせんぱいも甘いものが好きなんだね。わたしと一緒だなんて、何だか嬉しいな。 「ん~~! 舌と口中に粘りある草餅がいつまでも味わえて、食べたあとにほんのりと鼻に香ってくる笹の葉の香りが、とても好きです!」 「ありがとう、桜月さん」 成希せんぱいがわたしにお礼を言ってくれたけど、わたしもこんなに美味しいお餅に出会えて嬉しいです。もっと、甘いものに出会いつつ、成希せんぱいと仲良くなりたいな。
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