枯れ姫と小生意気なキミ

12/15
前へ
/219ページ
次へ
私にとっては 一種のお守りのような メガネを見つめながら 半分くらい残ったビールを一気に飲み干す。 私は普段 メガネを かけているけれど 視力が悪いわけでなく 両目とも2.0で視力に問題はない。 ただ 家族や ひとりの時 そして 私にとって 唯一の信頼できる友達である 美月の前以外では伊達眼鏡をかける。 「……まだ、怖い?他人と深く関わること」 「……どうかな。」 店員さんを呼び 生ビールのおかわりを頼む。 私が 伊達眼鏡をかけ 他人との 距離を置き出したのは あの日のあの彼との出来事が原因で 「それより、美月はどうなの?」 「どうって?」 「5年付き合ってる彼氏と、ようやく結婚が決まったって聞いたけど、順調なの?」 「もちろん、順調よ。週末は毎週彼と式場巡りよ。」 幸せそうに 嬉しそうに そう言う美月の姿に もしも あの出来事がなければ もしかしたら 私は今とは全く違う 別の人生を歩んでいたのかもしれないな…… ぼんやりと そう考える私がいて。 「羨ましい?ね、姫乃も恋したくなった?」 敏感な彼女は 些細な私の変化に気づき 前のめりになりながら キラキラと瞳を輝かせ私へとそう聞いてくる。 .
/219ページ

最初のコメントを投稿しよう!

331人が本棚に入れています
本棚に追加