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「……結構よ。それより、早く仕事に戻りなさい。今日中に仕事が終わらなかったら許さないから」
彼の
腕の間をすり抜け
顔色ひとつ変えずに淡々とした
口調でそう言いながら出入り口へと向かう。
「あらら……。やっぱり主任には効かないかー、残念……。普通なら、これでみんな俺に惚れるんだけどなー」
「悪かったわね、普通じゃなくて。それより、穂高くんも早く仕事に戻って。」
「はーい」
恋にうつつを
抜かしてる暇があったら
私は少しでも
仕事をして功績を残したい……。
所詮
私は女だからと
あの時私のことを
見下した人たちを見返すためにも------。
*
「お疲れ様でしたー」
就業の
チャイムがなり
あちこちから飛び交う
相手と自分のことを労う言葉。
今日は毎日働く
社会人にとっては花の金曜日。
周りから聞こえてくる皆の声も
心なしかいつもより弾んでいるように思う。
「主任、今から部の皆で飲みにいくんですけど、主任も行きませんか?」
書類の
チェックをしていると
部下のひとりが
私へとそう声をかけてきた。
.
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