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「悪いけど、まだ仕事が残ってるから。」
「そう、ですか……。じゃあ、お先に失礼しますね」
「お疲れ様」
それまで
騒がしかった
部署内は一気に静まり返る。
手に持っていた
書類をデスクの上に置き
首を左右に回しながら
立ち上がり大きく背伸びをする。
もうひと頑張りする前に
コーヒーでも買いに行こう……
「櫻井主任、今日も残業か?」
「みたいだなー」
廊下を
歩いていると
どこからか聞こえてきた
社員たちの会話に思わず歩みが止まる。
「ウチの枯れ姫様はお仕事熱心だから」
「本当、残念な枯れ姫だよなー。せっかく美人なのに、あの愛想のなさはないだろ」
「だろ?こっちは気を利かせて社交辞令で誘ってやったのに、あの返しだもんなー。」
「独りよがりな枯れ姫の下で働くのって、疲れるよな。そう考えると、やっぱり二課のがいいよなー。向こうは主任も男だしさ、理解あるし尊敬できるし。」
「だな……」
こういう
悪口はもう慣れた。
最初のうちは
傷つき
涙する日もあったけど
人間は学習して
強くなっていく生き物だから
最近では
悪口や陰口を言われても
腹は立つけれど
それ以上の感情を感じなくなっていた。
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