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翌年の2月、おばあちゃんが死んだ。
大きな病気とかじゃなくて、布団の中で眠ったまま死んでいたらしい。
ぼくは、おばあちゃんがいなくなるなんて考えたこともなかった。
お葬式にはたくさんの、おばあちゃんのことを大好きだった人達が来てくれて、みんなたくさん泣いていた。
けどぼくは、おばあちゃんがいなくなったことがよくわからなくて、たぶんずっと変な顔をしていた。
お葬式が終わって、ぼくはなんとなく、いつもおばあちゃんとお花見していた桜のところへ来た。
冬の何もついていない桜を見上げている内に、この桜が咲くところを、もうおばあちゃんと見ることは出来ないのだと気づいた。
気づいたら、涙が止まらなかった。ぽろぽろぽろぽろ、涙がどんどん出てきた。
うつむいて落ちた涙が、地面に消えていくのを見て、おばあちゃんの話を思い出した。
色んな人の、楽しいだけじゃなくて、悲しいとか、寂しいも見守ってくれる桜。
あのときはよくわからなかった話が、突然理解できた。
ここには、おばあちゃんと楽しく桜を見て、おはぎを食べた思い出も残ってるんだな。そう思ったら、なんだかあたたかい気持ちになってきて、だんだん涙が止まった。
それからも、ぼくは毎年春になると、おばあちゃんの桜を見に行く。
1人だけど、あんこときなこ、2つのおはぎを持って。
桜と一緒に、おばあちゃんも見守っていてくれる気がするから。
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